ハテナのごとく!

最近はnoteによくいる>https://note.com/jury_mine/

原点に返ってあまり知られてなさそうなポケモンの無駄知識を紹介していく

・過去に「みんはや」の企画で出したものを中心に
・あまり見かけないものを独断と偏見で選出
・必ずしも公式声明が出ているわけではなく、あくまでネットロアに近い推測によるものも多い
・基本的にポケモン関連なら何でもあり

 

1.道路の号数に欠番がある理由

カントージョウトホウエンシンオウと国内をモデルにした地方は、今のところ49-100、135-200番道路/水道が存在しない。
「100」という区切りが良い数字がないことも相まって、どうしてここが欠番だったのか疑問に思ったプレイヤーも多いのではないだろうか。

これは恐らく、現実の日本の国道に即しているものだと考えられる。そう、実は日本の国道は59-100号が現在欠番となっているのだ。
では59-100号が欠番なのかという理由については、かつて国道が「一級国道」「二級国道」に等級化されていた歴史に端を発する。現在に繋がる道路法が制定された1952年は前述の2種に道路の種類が分かれており、国土的に重要なものは一級、一級から枝分かれしたものを二級と呼んでいたようである。

ところが、当時はそれぞれの道路費用は国ではなく都道府県が負担することとなっていたため、財政的な困窮からなかなか敷設が進まなかった。そこで、国が一括で管理するようになり、現在の「一般国道」と呼ばれる1種類の規格になったのである。そしてその時、将来の一級国道の敷設を見越して番号として割り振られる予定だった58-100号が空白となったのである(なお58号のみは沖縄が本土復帰の際に新たに敷設された)。二級国道は101号からと規定されていたからだ。

ちなみにポケモンの地方になくて現実の日本にはある49-100、135-200番については、未だ舞台となっていない東北・中国・四国の国道に数字がちらほらと見られる(画像参照)。いつの日か再び国内がモデルとなったポケモンが出た時に新しく数字は埋まるのだろうか。

加えてここから推察されるものとして、イッシュ地方が1番道路から振り直されたのは既存の枠組みを取っ払う画期的な試みを意識したと同時に、モチーフになった国が変わったこともあるのかもしれない。

※参考 『日本の道路122万キロ大研究』/平沼義之

 

 

2.タモリはタル

タモリはタルは、代表作に『ロボットポンコッツ』などがある漫画家。『王ドロボウJING』などで有名な熊倉裕一のアシスタント経験があり、彼の影響を色濃く受けている(熊倉先生復帰してくれ)。
そんな彼、実はポケモンに関わった経験があるのだ。BBSが既に存在していたので知っている人も多いかもしれないが。

その作品とは2014年に公開された「本当は怖い?ポケモン」。
ハロウィンを意識して制作されたものと思われ、ゴーストタイプのポケモンが多く取り扱われており、とりわけホラー漫画家として名高い伊藤潤二とのコラボでも話題となった。
そんな最中で彼はサイトの手引きを務める「オカルトマニアのヒトミ」のイラストを担当した。

ここからが問題なのだが、彼はこのイラスト提供が発端となって「オカルトマニア」のキャラデザを考案したと勘違いされたことがある。それだけならまあよくあるネットのデマなのだが、それ以外にも別の理由があったように思えてならない。

それは彼が非常にグラマラスな、所謂「超乳」「奇乳」の女性キャラを描くからである。先述の『ロボットポンコッツ』は掲載紙では異例となる6年という長期間に渡り連載されたのだが、初期は普通の体形だったのに、徐々に人体造形を逸脱するような描写となっていった。これはある意味彼の代名詞でもあり、ググれば"そういった"キャラの画像が出てくるほどだ。

そしてオカルトマニアと言えば、何かとフウジョタウンのミルク売りのせいで巨乳のキャラ付けがされがちである。この2つの偶然が重なってタモリはタル=オカルトマニアのデザインという図式が成立してしまったのではないだろうか? と思うのだ。
ちなみに当該サイトの「オカルトマニアのヒトミ」が巨乳かと言われると画像に示した通り全然そんなことはなく、公式絵に即したものであり、彼がデザイナーという可能性は低いとわかる。

結局のところ実際に誰がオカルトマニアのデザインを担当したのかは定かではないが、普通に考えたら杉森健辺りではないかと思う。とにかく、作者の特徴とポケモンキャラのイメージが偶然合わさってしまった滑稽なデマというのが面白いのではないかと思うのだが、いかがだろうか。

タモリはタルデザインのオカルトマニアのヒトミ」

 

3.ポケモンの名がついた生き物

様々な実在の生物・モノ・概念がモチーフとなって生み出された不思議な不思議な生き物・ポケットモンスター。しかし時代を経てその知名度が世界規模になると同時に、ついに実在の生物に「逆輸入」されたものが存在する。ここでは中でも有名となったものを3種類ほど抜粋して紹介する。

①Binburrum articuno/Binburrum moltres/Binburrum zapdos
1年半ほど前に話題となったので覚えている人も多いかもしれない。articuno=フリーザー、moltres=ファイヤー、zapdos=サンダーということで、初代三鳥の名前がついたアカハネムシクイ(Binburrum)の一種だそうだ。
イースタン・ニュー・メキシコ大学の昆虫学の教授Darren Pollock博士と、オーストラリア国立大学の博士課程のYun Hsiao氏が発見。「新種の命名は被りがちだから、今まで誰もつけていないような名前にしたい」という理由によるものだそうだ。もちろん、同氏がポケモンのファンだということも挙げられる。

ピカチュリン
生き物ではなく細胞。
2008年、大阪バイオサイエンス研究所の古川貴久らの研究チームは、マウスから生命の動体視力に関与すると考えられている細胞を発見し「ピカチュリン」と名付けた。恐らく動体視力が素早い動きを連想させるからだろう(マウスから発見したのは多分関係がない)。
この細胞はヒトはもちろん、イヌやネコといった動物にも存在すると考えられており、将来的には網膜異常の解明にも繋がるという。

ピカチュウウミウシ
ポケモンが由来となった生物」と聞いて恐らく真っ先に思い浮かぶのはこれではないだろうか。様々な体色を持つことからダイバーに人気の高いウミウシだが、とりわけその名で多くに親しまれ、ウミウシを目的としたダイビングブームのきっかけになったとされている。しかしこれが記載されたのは1884年と非常に古く、ポケモンが生まれる1世紀以上前のことである。

またピカチュウウミウシはあくまで通称であり、正式な和名は「ウデフリツノザヤウミウシ」という。ダイバーが発見し勝手につけた名前がかなり浸透しているケースがウミウシには多いようだ。しかし学名と違って和名は通称で浸透しても何ら問題がない※、とのことである。

※参考
https://ajoa.exblog.jp/26671991/

 

左からBinburrum articuno/Binburrum moltres/Binburrum zapdos

 

 

 

4.BWに施された割れ対策

ポケモンBWの発売は2010年9月18日。当時はまさにDSの全盛期とも言えるべき時代であり、マジコンなどを用いた不正な無料プレイ、所謂「割れ」が行われた全盛期であった。当時はSNSも普及しておらずゲーム板にはゲーハー達が集い、日夜割れに対する情報交換を行っていたほどである。諸君らの中にもマジコンでデータを吸い出したり、或いはコードフリークでチートをやり放題していたプレイヤーは多いのではないだろうか。

しかしゲーム会社がこの事態を黙って見ているわけがない。ファミコン時代からそうであったように、様々な割れ対策を施した。BWもその一つである。
具体的には、経験値がもらえないというもの。普通DSのポケモンのソフトには通信交換などに用いる赤外線機能が常備されているのだが、端末に依存しないマジコンには存在しない。その差異を利用して不正検知が行われる。
当然経験値がもらえないのだからゲームは進行できないに等しい。こうしてゲハ板の住人を(いい意味で)発狂させた対策であったが、残念ながら恐らく現在は我でも普通にプレイが可能となってしまっている。3DSの改造の際にもよく見られた現象だが、結局こうしたものは企業側とクラッカー側のいたちごっこなのである。

なおBWが発売された2010年には著作権が改正され、割れこと「違法ダウンロード」が明確な法律の定義によって違法と定められた年でもある。にも関わらずこのような状況下にあり、有料コンテンツが増えた現在でもあらゆるものが割られてしまい、Winnyの時代から進歩がないのは痛ましい限りである。

なお先述したようにポケモン以外にも多種多様な対策が行われており、アニオタwikiにはそれが載っているので目を通してみるとなかなかに面白い。個人的にはリアルタイムでTwitterで見た『Angel Beats!』のゲーム版の割れ対策がなかなか痛快だった。

w.atwiki.jp

 

 

5.アニポケでしか見ない歌手の実情

放送から25年以上が経過しているアニポケシリーズ。その長寿っぷりに等しく数々のアーティストによってOP,EDが歌われアニメを彩らせてきた。しかしその中にはポケモン以外で名前を聞いたことがない人物もいるのではないだろうか? そうしたアーティストのことを簡単に調べてみたので、何人か情報を掲載する(カッコ内は代表曲)。ほぼDP。


①可名(『ポケッターリ・モンスターリ』)
本業は女優。可名の他に名義が鴻口可南、KANA、太田衣美など多く存在するが、本名は太田絵美(この名義での出演も有)。
主に端役として『夜王 ~YAOH~』や『警視庁捜査一課9係』などに出演、またアニメ『Dr.リンにきいてみて!』『満月をさがして』では声優も担当した。
2008年を最後に引退状態にあるようだ。


②江崎とし子(『そこに空があるから』)
シンガーソングライターとして活動するが、どちらかといえばコーラスやプロデュースに回ることが多い。あきよしふみえ、奥井亜紀と組んだ「BW合唱団」でもコーラスが主である。
参加した主な楽曲には中島美嘉の『Shadows of you』、鬼束ちひろの『インソムニア』など有名曲も。
プロデューサーとしては中孝介などを手掛け、江崎が手掛けた彼の代表曲『夏夕空』はアニメ『夏目友人帳』のEDテーマである。


③高屋亜希那(『バトルフロンティア』)
AG屈指の名曲は彼女のパワーボイスがあってこそだが、活動についてはあまり情報がない。
一応彼女について調べたブログもあったが、なんだかややこしいので丸投げ。少なくともふじのほのかは天てれ戦士なので違うだろう(彼女の曲も知っているが声質が明らかに違う)。

『バトルフロンティア』を歌った高屋亜希那さんを調べてみた! - 雑記


加えて確か昔調べた時プリキュアに参加していた記憶があったがこれは確かなようだ。『スイートプリキュア♪』のサントラにある『セイレーンの歌』を歌っている。

 

④あきよしふみえ(『Together』)
恐らくはこの話題でで一番最初に名前が出てきそうな歌手。かつてはロッカフラグースというバンドのボーカルをしていたが、2007年に解散(2017年に再結成)しソロ活動へと移る。ダイパの曲を多く歌ったのはこの時期に該当すると考えてよいだろう。
ちなみに田村直美も同様にPEARLというバンドのボーカルからソロ活動を始め、ポケモンの楽曲や『ゆずれない願い』などでヒットを記録している。
また作詞家としては小倉唯石原夏織からなるゆいかおりの2枚目のシングルに収録された『VIVIVID PARTY!』などを手掛けた。

 

⑤グリン(『君のそばで ~ヒカリのテーマ~』)
現在の歌手名義は「LOVE」。彼女もまたバンドのボーカルからソロプロジェクトを始めた歌手である。
布袋寅泰の作品などに参加経験がある。
10年代前半には地方ライブを精力的に行っていたようだ。


⑥MADOKA.(『君の胸にLaLaLa』)
こちらも大変情報が少ない。同名義で同じく歌手であるモノマネ芸人コロッケの娘とは別人。かつてはユニット「カナリアン・ウィード」で活動していたようだ。
ちなみに彼女、『君の胸にLaLaLa』の前に水の都の護神の挿入歌『SECRET GARDEN』も歌っている。こちらも名曲なので是非。だがそれ以前と以後の歌手活動情報が皆無に等しく、2002年から8年ものブランクを開けて再び1曲だけ歌うという一風珍しい状況となっている。
このことから察するに、恐らく本業はコーラスメインだと思われる。

 

⑦歌奈子(『あしたはきっと』)

現在の名義はcanaco。
子役時代にはNHK教育の『さわやか三組』にレギュラー出演もしていた。
ポケモン以外の活動では、同じ事務所の福山芳樹の手引きであかべぇそふとつぅのアダルトゲーム『置き場がないっ!』のEDテーマも歌っている。
彼女以外で国民的アニメとアダルトゲームの曲を両方歌ったのは『夢をかなえてドラえもん』で有名なmao(Duca)くらいではないだろうか。

 

6.くれぐれもデマに惑わされないよう

2か月ほど前、とあるbotのツイートがバズった。その内容は画像の通り。
アニポケの登場人物は実はこんな本名なのだ、というものだ。

……だが結論から言うと嘘乙の極みである。
これはソニックというユーザーが作った二次創作『ポケットモンスター小説版』の設定の名前。正式な時期は定かではないが、サイトのUIに加え最新話でも初代のポケモンしか登場しておらず、プロローグではポケモンのことを「携帯獣」と言っている(本体がゲームボーイであったことからそう呼ばれた)ことから察して無印の頃に作られた古い二次創作ではないかと推測される。

masapoke.sakura.ne.jp


繰り返すがこの設定は二次創作である。そもそもこのbot自体2013年頃から放置されているアフィなので決して情報を真に受けないように。こんなデマが万単位でバズっていることにインターネットの片隅で未来を憂う。

貼る価値もないのだが、嘘と証明するために

 

 

7.あの場所で拾えるもの

ポケモン本編には様々な場所に道具が落ちている。そしてRPG全般にはよくあることだが、特定のダンジョンにはその場所を象徴する道具が落ちているものもある。今回はそんな中から僕が印象に残ったものを2つ。

①アカギの部屋にするどいツメ
トバリシティにある「ギンガだんアジト」の4階にあるアカギの部屋。アカギとバトルを行い、終わり際にはマスターボールも貰える重要なポイントだが、実はその右側のフロアにはダウジングマシンで調べるとするどいツメが落ちている。アカギの手持ちにいるニューラをマニューラに進化させるために必要となるアイテムだ。
なお、同様にギンガ団そうこの内部にも通常の形でやみのいしが落ちているが、これも同じくアカギの手持ちであるヤミカラスドンカラスに進化させるためのアイテムである。
こうしたところにゲーフリの遊び心が見て取れるだろう。

②前作主人公の部屋におうじゃのしるし
これは何回か「鳥肌が立った」と言いふらしていたりする。
BW2の特徴の1つである「おもいでリンク」を使用することによって、前作主人公にまつわる様々なイベントが起こるがこれもそのうちの1つだ。
あまり語ることはない。ただ、震えた。
やはりBW2の「2年後」ってシステムは効果的な手法だと考えているゆえ、他の作品にも流用してほしいと思う今日この頃。

 

 

 

 

8.誰もが知っているBGMのタイトル

ポケモンで『連れて行く』と聞いて何のことかわかるプレイヤーは少ないだろう。BGMのタイトルだ、と言われても恐らく知らなければピンとこない。

だがそのBGMを聴けば本編をプレイしたことがあるなら誰もが知っている一"聴"瞭然のメロディが流れるはずだ。もし知らないのであれば以下のURLから聴いて頂きたい。

www.nicovideo.jp
そう、ストーリーのほぼ最初の方、主人公がチュートリアルや手引きを受けるときに必ず流れるあのBGMだ。本編においては確か現在唯一の皆勤賞となっているBGMなのである。
「プレイしていれば誰もが聴いたことあるはずなのに、タイトルの知名度が低い」という点では右に出るものはないと思っている。

 

 

9.サカキがペルシアンを連れている理由をメタ的に考える

サカキのポケモン、と言えばペルシアンを思い浮かべるプレイヤーが多いのではないだろうか。しかしなぜペルシアンを連れているのか? それは物語におけるある種のレッテルにヒントがあるかもしれない。

サカキに限らず、どうも悪のボスというのは猫を抱いて膝の上に乗せがちである。なんとなく気品漂う崇高な雰囲気が出るからか、はたまたギャップを狙っているのかわからないが、ある種組織のボスの共通イメージとしてかようなものがあるといっていい。

それを知らしめたのがお馴染み007シリーズの2作目『ロシアより愛をこめて』だという。主人公ジェームズ・ボンドの宿敵エルンスト・スタヴロ・ブロフェルドは常に白いペルシャ猫を抱きかかえており、これが決定的なイメージとなった。尤も2作目のうちはブロフェルドが顔を見せることはなく、3作目の『007は二度死ぬ』から顔を見せることになるのだが。

ペルシャ猫ということを考えても、この種がモデルとなったペルシアンを抱えているサカキはブロフェルドに端を発したオマージュと言ってもいいのではないだろうか?

ちなみにこのペルシアンの声優、アニメ版ではサトシ役でお馴染み松本梨香が務めている。このことは2002年の『ポケモンサイドストーリー』まで明らかになることがなかった。

 

ブロフェルドの猫

サカキのペルシアン



10.バリコオルとチャップリン

映画からと思われる元ネタをもう一つ。

剣盾から新たに登場したバリヤードの進化系、バリコオル。何となく察した人も多いだろうが、このポケモンの元ネタはあらゆる意味でチャールズ・チャップリンと考えてよいだろう。ステッキを持っている、イギリスの出身である、コメディアンポケモンである……などバリコオルが彼を意識しているのは火を見るよりも明らかだが、さらに深堀りしてみる。

フォーカスしたいのは、何故こおりタイプを持っているかということだ。何の意味もなく付与されたのだとしたらあまりにも突飛すぎる。だからこれもやはり、チャップリンに元ネタがあるのではないだろうか。

『黄金狂時代』という彼の代表作がある。飢えや寒さといったハードな話題を、まさしくチャップリンといった諧謔的かつ風刺をこめた描写を用いることでエンターテインメントに昇華させた当作は傑作と名高い。
その中の代表的なシーンに、両手に持ったフォークにロールパンを刺して足に見立て、タップダンスを披露するシーンがある。
これこそまさしくバリコオルにこおりタイプが付与された元ネタではないだろうか。

先程飢えや寒さといったが、その通りこの映画の舞台は雪山の中。こおりタイプがつくのも辻褄が合う。加えてチャップリンの代名詞ともいえる「タップダンス」は、バリコオルの図鑑説明にも組み込まれるほどの得意技だ。

バリコオルの元ネタはチャップリン、それも『黄金狂時代』にあるのではないだろうか。

 

バリコオルの元ネタと思しき『黄金狂時代』の一幕

 

 

11.初代ポケモンウルトラマンの深い関わり(カイロス/ゴース/パルシェン)

初代から登場するご存じカイロス。両側にハサミがあること、カブトムシをモチーフとしたヘラクロスのライバル的扱いであるということ、そして何より分類が「くわがたポケモン」であることからモチーフがクワガタムシなのは火を見るより明らかである。

しかしこのカイロス、これだけクワガタ要素を押し出しているにも関わらずアリジゴクがモチーフではないかとも言われる。一体どういうことなのか?

ここでウルトラマンシリーズの登場である。実ゲーフリの社員にはウルトラマンファンがいるのではないか、という推測が立っているのだ。
例えばこれらの初代ポケモンの図鑑説明なんかはそれを裏付ける。

ゴース
「うすい ガスじょうの せいめいたい。ガスに つつまれると インドぞうも 2びょうで たおれる。」

パルシェン
「カラが ひじょうに かたく ナパームだんでも こわせない。こうげきするときだけ ひらく。」

初代の図鑑説明において度々特徴的な比喩として挙げられるこの文章。実はこれらにもウルトラマンに端を発した元ネタが存在する。
それが1970年に発行された美研の『ウルトラ怪獣図鑑』だ。半世紀近く前の特撮ブームに欠かせないのが図鑑である。新しい怪獣が出るたびに身長、体重、能力などが紹介され、中でも弱点なんかは今でもたびたび話題に上がる特徴的な要素である。
そうしたもののうちの一つ『ウルトラ怪獣図鑑』に登場するとある怪獣に、以下のような説明がある。これこそがそのものずばりの元ネタであり、田尻智も参考にしたことを明言している。

毒ガス怪獣ケムラー
インド象でも三秒で死んでしまう。」

地底怪獣テレスドン
「ナパーム弾をうちこまれても平気。」

 

さて、話をカイロスに戻そう。
ウルトラマンアントラーという怪獣が登場する。見ての通りクワガタにしか見えないが、「アント」という名前からも分かる通りアリジゴクの怪獣なのである。その見間違えようたるや、作中でも「クワガタの化け物」とすら言われていたほどだ。
つまり、これこそがカイロス=アリジゴク説の元ネタではないかと考えられているのである。

ポケットモンスターウルトラ怪獣の血を引いていると言っても過言ではないだろう。

 

モチーフとなったという裏付けも取れている

アントラーの説明

 

 

12.酷評された主題歌と幻の主題歌

1999年公開の映画『幻のポケモン ルギア爆誕』をご存じだろう。海を大きな舞台にした豪胆ながらも含みのあるシナリオや描写は今もなお評価が高い。ちなみに「爆誕」という言葉を生んだのはこの映画と言われているが、厳密には間違いである。元より『爆球連発!!スーパービーダマン』など、コロコロを主体に「爆〇」という単語が頻繁に使われており、「爆誕」もルギア以前に使われていたようだ。

それはさておき、当作の主題歌は安室奈美恵が担当している。代表曲『CAN YOU CELEBRATE?』のリリースから僅か2年、当時人気絶頂期にあった彼は90年代小室ファミリー最後の象徴と言ってもいい。もちろんこの主題歌『toi et moi』(トワ・エ・モワ)も小室哲哉がプロデュースする盤石な形で作られた。

ところが、である。
同映画の脚本を担当した故・首藤剛志はこの楽曲を良しとしなかった。彼が亡くなる僅か1年前、掲載されたインタビュー記事には
「何を言いたいのか分からない聞き取りにくい歌詞と、うんざりするほど聞きなれたオリジナリティのないポップ調の曲が、まるで作品内容にあっていない。おそらく、アニメ脚本どころか『ポケモン』がどんなゲームかすら知らずに作られた曲なのだろう。10年たった今も、聞くとがっかりする」(一部抜粋、詳細は以下のリンクへ)

www.style.fm


と極めてボロボロにこき下ろしている。確かに前作の『風といっしょに』が素晴らしい曲なのも相まって、それと比べてしまえば『toi et moi』が当時のJ-POPの象徴的な立場でしかなく、タイアップ先を意識していないと言われるのは仕方がないといえばそうなのかもしれないが……ともかく首藤はこの曲を気に入らなかったようだ。

そしてさらに、当初は別の主題歌が構想されていたという。それが作中に登場する少女・フルーラ(CV:平松晶子)が歌う『はてしない世界』である。もともとこのメロディはフルーラが作中で笛を用いて演奏していた曲に歌詞をつけたものであり、それを考えれば確かに主題歌としての構想には相応しい。
イメージ的には、『オラシオン』に歌詞をつけたようなものだろう。作曲もポケモンの楽曲を数多く手掛けた宮崎慎二、作詞はおなじみ監督湯山邦彦と、そういった意味でもポケモンを意識したつくりである。

www.nicovideo.jp
しかし、実際にはこれが主題歌として使われることはなく『toi et moi』が起用されることとなった。後に首藤は上記とは別のインタビューにおいて、そうなった理由として映画を広めるために仕方なくだった、述べている。しかしそれでも安易に小室ファミリーを使われたと思われないように、綿密にavex及びスタッフと交渉を重ねたそうだ。

 

 

13.オフ会まで開かれた鬼畜ミッション

5世代にはハイリンクというシステムがあった。Cギアを利用して他プレイヤーの「世界」に訪れることができ、交流が行える。僕はそこまでやった覚えがないのだが。
そしてBW2からは新たにやりこみ要素として「フェスミッション」が追加された。読んで字の通り、ハイリンクを介してさまざまなミッションを受けることができる。

そしてBW2で追加されたやりこみ要素と言えば「メダルラリー」を忘れてはならない。プレイしている方も多いだろうから説明は割愛するが、従来のトレーナーカードの色どころではないシリーズ屈指のやりこみ要素だ。

これらフェスミッションとメダルラリーが掛け合わされることによって、とんでもなく難しいクリア条件が生まれてしまった。

それが、メダルのひとつ「てんとりサウザンド」である。説明にはこうある。

「1000以上の スコアを 記録し 相当 盛り上がった ミッションに 参加した 証しの メダル。」

つまるところ、フェスミッションで1000点以上を取ればいいのである。プレイしていないユーザーはぴんと来ないかもしれないが、少しでもやったことがあればその恐ろしさがわかるのではないだろうか?

フェスミッションというのは、基本的に画像のようなキラキラにアプローチすることによってアイテムが手に入り、ミッション達成までの値が加算されていく。このキラキラはまああちこちを散策していれば見つけるのに対して苦労はないのだが、問題は制限時間がせいぜい5分しかないことだ。

どう頑張っても1-2人では3桁はおろか50点すら全く届かない。つまるところ計算上「30人のプレイヤーが集結し、5分間で一斉に1000点を記録しなければならない」ということになる。これは容易ではなく、確実に当時の僕らのような子供にはできることではない。まさしくやりこみにふさわしいメダルだったのだ。

では当時の「大人たち」はどうしたのか?
そこで開かれたのが、今は亡き浜松町のポケモンセンタートウキョーにて行われたオフ会である。
2012年、2chポケモン板の呼びかけによって行われたこのイベントの規模は100人以上。想定を上回る3000点以上を記録し、恐らくは彼らがこの鬼畜ミッションの初制覇者となった。
このイベントはその後福岡や名古屋でも有志たちによって行われたようである。
BWはいろいろと全国規模のイベントが多かったことを伺わせる。

 

このように「キラキラ」を集めていく

 

 

14.史上最狂の伝説使いが生み出したあの言葉

一部のポケモンファンはアニポケDPに登場したタクトという男を知っているだろう。
アニメ189話、シンオウリーグ・スズラン大会にて初登場した彼だが、シンオウ地方のジム全てをあのダークライで突破してきたというとんでもないヤツ。そしてサトシはなんとかダークライを倒すのだが、その後に出てきたポケモンはなんとラティオス最後の切り札となったピカチュウは相打ちに持ち込まれて終わり、結果としてワンサイドゲームとなりサトシは準決勝で姿を消した。そしてタクトのその後は一切不明である。

そんなあんまりにもあんまりなシナリオから悪しきデウス・エクス・マキナとしてしばしば批判の矢面に立たされることも多い。「サトシがリーグ優勝したら困る」という制作側の事情があったゆえの緊急措置と見受けられるが、そんな彼を発端としてある言葉が生み出された。

それが今でも使われる(よね?)「催眠厨」「伝説厨」という言葉である。

「催眠厨」は、特に4-5世代の対戦を経験してきたプレイヤーは数多く耳にしただろう。7世代でナーフを食らうまでダークライよろしく相手に悪夢を見せつけたわざ「ダークホール」は、ドーブルのスケッチなどの影響で猛威を振るい、使用禁止措置も出されたほどである。
「伝説厨」も少なくとも僕らの世代は耳馴染みが深い。ネットではフリーマッチに潜った時に伝説ばかり使う「キッズ」がそう揶揄されていた気もするが、リアルでも「お前伝説厨じゃん」なんて言葉を耳にしたこともある。他ユーザーがどうかは定かではないが、リアルにも飛び火したスラングだと言えよう。

かような出来事に加え、厨ポケ狩り講座でお馴染みの某実況者の手により、元より汎い意味で使われる「厨」というスラングポケモンでも頻繁に使われることとなった。

 

 

 

15.三値を確立した男

ポケモン廃人の入り口としてお馴染みの種族値努力値個体値の三値。公式に語られることは未だないこれらの隠しパラメータ、実は誰によって発見及び確立されたかが明らかとなっている。

それがHP「hiwasa's game page」の管理人であり、当時一橋大学に在学していた日和佐康一(HN:hiwasa、以下この表記)という男だ。2010年にはhiwasa本人によってそれを仄めかすようなツイートがされている(画像参照)。

彼は一般的に解析に容易とされる逆アセンブラを用いた形式でなく、最近で言うところのコードフリークのような改造ツールによる人力調査で隠しパラメータを明らかにした。これだけでも骨が折れる作業だと思うのだが、時に1997年、下記のhiwasaのアーカイブサイトに示されている計算式によって三値の正体を掴み、それぞれに「成長率」「固有値」「努力値」と名付けた。
これが、努力値という言葉の初出と見られている。

web.archive.org


ちなみに成長率とは後の種族値固有値とは後の個体値のことである。この2つの初出については、彼のブログのコメント欄によるものとされている。

更にhiwasaはバグの研究にも熱心だった。内部データを詳らかにした彼は、SELECTバグを始めとする初代ポケモンのバグ技の先駆者の一人とも言われている。とりわけミュウの作り方について熱心に研究していたようだ(ただし「タマムシシティでミュウを釣る」などのいわゆるfifth法が確立されたのはもっと後)。
こうした取り組みが、後の多くのポケモンサイトに影響を与えることとなる。

ポケモン史に名を残す偉人として、我々は密かに感謝しなければならない人物に違いない。

 

 

16.DPtと『とある魔術の禁書目録』の深い?関わり

BBS民なら『とある魔術の禁書目録』という作品をある程度は知っているのではないか。
「科学と魔術が交差するとき、物語は始まる――!!」のキャッチコピーでお馴染みの、3度に渡ってアニメ化もされているライトノベルの代表格である。

早めに言っておくが、当作とポケモンシリーズに何ら公的な関わりはない。ここに記しているのは単なる偶然である。しかし偶然にしてはかなり被っていて面白かったのでここに組み込むことにした。

さて、DPtにはミルというネームドトレーナーがいる。まよいのどうくつの奥深くで迷っている幼女であり、主人公が助けるとED後に勝負所で戦えるトレーナーの一人だ。またモミ、バク、マイ、ゲンと共に、4世代から新たに導入されたマルチバトルではパートナーの一人として共闘することができる。初期にユンゲラーを連れていることからも見受けられるように、とくこうの高いポケモンを使うのが好みなようだ。


彼女はアニメ版にも登場している。DP編第47話にて、ダム湖に沈んだモンスターボールを探すためにサトシ一行に協力を求め、無事見つかるとお礼にケーシィを使ってヨスガシティにテレポートさせた。
余談だがアニメ版の彼女が使うのがユンゲラーではなくフーディンなのは、かのユリ・ゲラーの例の訴訟騒動の影響である。

そんなミルだが、その時アニメ版で声優を務めたのは新井里美。この時点で、『とある』シリーズを知っているユーザーはある共通点にたどり着くのではないだろうか。ヒントは「テレポート」というワードである。
そう、白井黒子を彷彿とさせるのだ。恐らくであるが新井里美の代表作と聞いてオタクのほとんどは彼女の名前を出すと言っても過言ではない。そして彼女はレベル4の空間移動(テレポート)能力を持つ。

要は「CV新井里美のテレポートキャラ」が被っているのである。しかも代表作と。
念のため付け加えておくが、DP編第47話の放送は2007年、『とある魔術の禁書目録』のアニメは2008年なのでミルの方が先である。
偶然にしてもなかなか面白いなと思うのだ。


そして驚くべきことに『とある』シリーズとDPtの共通点はまだある。
シリーズお馴染みのチャンピオンロードには何人ものトレーナーが待ち構えているが、その中に「ドラゴンつかいのトウマ」と「エリートトレーナーのミコト」というトレーナーがいる。

『とある』シリーズを見たことがあればもうお気づきだろう。「上条当麻」と「御坂美琴」の名前と被っているのだ。彼らはそれぞれ主人公とメインヒロインという作中の根幹をなすキャラである。しかもトレーナー同士の距離も近い。
とりわけ御坂美琴と言えば学園都市に7人しかいないと言われるレベル5「超電磁砲」(レールガン)を持ち、スピンオフ『とある科学の超電磁砲』にその名を冠されていることで有名だ。
そして「エリートトレーナーのミコト」はでんき技で名高いジバコイルを使ってくるのである。流石にでんじほうまで覚えているというわけではないが。

DPの発売は当然2006年なのでこちらもアニメより前の話になるが、『とある魔術の禁書目録』の原作は2004年刊行である。偶然にしてはできすぎているとまでは言わないが、もしかしたらアニメ化前にこれを読んでいたファンがゲーフリ、ひいてはスタッフの中にいたのかもしれない。

 

 

ミコトとトウマの位置

 

 

17.チャンピオンの改造疑惑

既に世界規模の知名度を誇るようになって久しいポケモンは、各地でバトル大会が行われている。中でも代表的なのは2009年から開催されている「ワールドチャンピオンシップス(通称:WCS)」だ。

そんなWCSの2016年大会を制したWolfe Glickという男がいた。彼は英語版Wikipediaに記事があるほどその筋には広く知られた人物であり、公式大会以外にも非公式のナショナル大会「World Cup of Pokemon VGC」も多く制し、史上最高格のトレーナーと名高い。

前回大会でセジュンのパチリスがバトル場を席巻したように、彼もまた「厨ポケ」ではない独特のチョイスのポケモンで場をかき乱す傾向にあった。そんなWCS2016で目玉となったのは、彼の使う「がむしゃら」を覚えたライチュウである。

当然ピチュー系統はがむしゃらを通常覚えないが、2015年にPGLのイベント「戦う! ピカチュウ大会チュウ!」の参加者プレゼントとしてゲットすることができた配信個体である。彼はこの個体をライチュウに進化させ対戦に使用したのである。

ところが、だ。彼のライチュウにはある不審な点があった。それは個体が6Vということである。

6世代以降の配信は3V固定となったものが多いが、それでも6Vが出現する確率は1/32768。これに性格を指定するとなれば25種類の性格数をかけて1/819200。到底1人の人間がそうやすやすと出せるものだとは思えない。
ただでさえ6世代はXYのコピーバグの影響で今は亡きポケモンスタイルなどでグレー個体が横行し、多くの理想個体の配信は白眼視された。

これだけでも怪しいのだが、極めつけは「がむしゃらピカチュウが」3Vではなく2V固定だったということだ。そのうえwolfeの持っていた個体の性格は理想と言える臆病。これが一体どのくらいの確率になるか考えると、恐らく32^4*25で1/26214400。
気の遠くなるような確率である。
さらにさらにそんな希少な個体をコピーバグで増殖させてTwitterで配ろうとしていたのだ(ぶっちゃけ僕は欲しいのだが)。

こんなことだからwolfeの不正疑惑は当初話題となったが、今となっては誰も真相を知るものはいない。


そしてこの話には続きがある。
あのWSCから4年が経った2020年。ある日本のユーザーがこの個体の「再現」に成功した。再現とはほかでもない、要は乱数を使ったのである。
4,5世代から一転、当時は不可能とされていた6世代の乱数は、有志による技術の進歩により今やほとんどが可能となっている。これを利用して配達員乱数を行い、手に入れたというものだ。
ちなみに僕は6世代の乱数を固定、配達、ID調整などひとしきり成功させたのだが、慣れにもよるが流石に4,5世代より面倒といえば面倒である。
起動させるソフトのタイミングによってa-zまでの世界線があり、例えばaの世界線を引いたら任意の個体が出るa'まで、bの世界線を引いたら任意の個体が出るb'まで……といったように待つ必要があるのだ。そして入手難易度が高い(≒理想個体、6V)ほどタイマーを起動してから長時間待たなければならない。

この方法で彼はWolfeの個体を再現したわけだが、タイマーのカウントダウン完了まで費やした時間は何と2週間。ある程度任意の個体に狙いを定めてもなおそれほどまでに臆病6Vは難しかったわけだが……真相や如何に。

↓上記の乱数について書かれたブログ

taiyaki3gen.hatenablog.com

 

 

 

18.リアルレッドと呼ばれた男

引き続き疑惑のある世界大会のプレイヤーについての話だが、彼はシロの可能性が高いとみている。

先程WCSは2009年から始まったと書いたが、では初代の優勝者は誰なのか?
それこそが「リアルレッド」の異名をとった草薙昨日(本名:辻一行)だ。

「ドクロエンペ」と呼ばれた当時主流の雨パ兼雨パのメタになりうるコンビで一世を風靡し、それ以外にもボーマンダメタグロスといった一線級のポケモンをバランス良く配置、その戦略性でダブルバトルの門戸を大きく開いた偉大なる人物である。
このことからWCS2015の優勝者ビエラを始め、現代のバトルランカーに与えた影響は多大だ。

そんな彼のバトルスタイルにおいてひときわ目立ったのが、すべてのポケモンが6V、そしてパーティ6体のうち5体が色違いということだ。当然、当初は改造が疑われた。だがラストチャレンジ大会で使用したパーティが無断に解析され、その結果性格値を含めすべてのポケモンがシロの個体であることが確認された(そもそも改造だとしたらここまで露骨に色違い6Vにするだろうか?)。

そう、つまり彼は当時膾炙していなかった乱数調整を用いて個体を調達していたのである。

繰り返すが、彼は恐らくシロだ。にも関わらず改造を疑う心無い連中によって2ちゃんねるに叩きスレまで建てられてしまい、しまいには誹謗中傷が相次いだ(今でも調べれば出てくる)。当時のユーザーにとっては乱数調整とは改造にしか見えてなかったのだろう。今でも一部はそうなのだろうが。

そんな状況に嫌気がさしたからかどうかは定かではないが、これ以降彼が表舞台に出てくることは殆どなかったのだ。
現在は自宅にWi-Fiも通っておらず対人戦はおろかポケモンからも多くを引き、引きこもり生活を送っている(調べればツイ垢も出てくるが、そのほとんどがパチスロである)。
これこそ、彼が「リアルレッド」と呼ばれる所以なのである。

どうか多くのポケモンプレイヤーは彼のことを忘れないで頂きたい、と僭越ながら思うのだ。

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19.ハルカなのにヒカリ

アニポケはサトシ一行がさまざまな場所へ旅をし、その度にポケモンと出会い絆を深めていく。そこに欠かせないのがトレーナーを始めとした人々の出会いである。

そんな旅先で出会うトレーナーたちの中には、もちろん16のミルのように予めゲームに登場していることも多いが、アニメのみの登場で、1話-数話限りの交流をする人物もいる。そんな中に個人的に面白い形で名前を残したトレーナーがいたので紹介。

無印編第190話『ウインディほのおのいし! 』に登場したハルカというトレーナーがいる。ウインディを使いこなす華麗なお姉さんということもあり、タケシはいつものように目がハートになっていた。
彼女は大会の賞品となっていたほのおのいし届けようとしていたのだが、道中のロケット団に奪われてしまう。しかしサトシ一行の活躍によって無事取り戻し、最後はロケット団を追い払って別れを告げたのだった。

さて、先に述べた通り彼女の名前は「ハルカ」だが、ポケモンでハルカといえば、当然ほとんどの人が3世代の女主人公もといAGのヒロインであるハルカを思い浮かべるだろう。
これだけならそれほど珍しくはない。案外作中でメインとなるトレーナーの名前は被っていたりするのだ。
14に触れたタクトも、AGのトレーナーズスクールにいた生徒に同じ名前がいる。まあDPのタクトはWCS2009のカード部門の優勝者・板垣拓斗からとられている、ということもあるのだが。

彼女の何がここに書くに値すると言えば、声優が豊口めぐみであったということだ。
言うまでもなく豊口めぐみと言えば、DPのヒロイン・ヒカリの声優。
つまりAGもDPも始まる前の無印の段階で、ハルカ(CV:ヒカリ)という偶然が発生していたのである。

更に無印のハルカにはユタカという弟まで登場している。これもまたマサトを彷彿とさせる面白い偶然ではないだろうか。

ちなみに3世代のハルカの英語名は"May"というのだが、この名前はBW2の主人公メイとも被ってしまっている。
何かと名前の被りに縁があるハルカであった。

 

画像の紫の髪の女子がハルカ、紫の髪の男子が弟のユタカ

 

 

20.きのみ問題

20代以上、特に3世代をリアルタイムでやっていたプレイヤーであれば「きのみ問題」自体は多くが耳にしているかもしれない。
それを承知の上であえて語るのであれば、ゲーム史上なかなか珍しい状況のバグであるということと、裏ポケモン史に大きな影響を及ぼしたということについても触れるべきであると考えている。よってここでは改めてきのみ問題の沿革を記すとともに、その特異性や後のシリーズにもたらした影響について述べる。

まず「きのみ問題」が何を指すかということについて、RSに起こったバグであることを知っているユーザーは多いだろう。しかし20年近く前ということも影響してか、その内容についてあまり触れられているのを見たことがない。よってその説明から行っていく。

【そもそもきのみ問題とは?】
ことの発端はRS発売から1年が経過した2003年11月22日頃のことである。
その名称に冠されているように「きのみが育たなくなる」不具合を始め、「ゲーム内の日付に関連付けたイベントが一切できなくなってしまう」という不具合が相次いで報告された。

原因は何か――。当初はお馴染み内蔵電池切れが疑われたのだが、それは否定された。理由としては、「通常内蔵電池は4-5年は持つこと」「そもそも主人公の部屋の時計は動いていること」である。さらに、ゲームをはじめからプレイしてもこの現象は改善されることはなかったのだ。

結局公式声明がないままであったため推測の域を出ることはないが、「年単位での時間カウントがROM内できていなかった」のが主な理由と見られている。
事件が起こった2003年11月22日は、RSの発売日である2002年11月21日から366日目。要は1年と1日目だ。初期出荷版のRSは予め1年分のタイマーしか用意できておらず、結果として「日付に関わるイベントが進行しない」という不具合が発生した、ということである。

 

【きのみ問題の特異性】
あくまでリアルタイムでは体験することのなかった僕の個人的な感想になるが、きのみ問題は多くのゲーム界隈を席巻してきたバグに比べインパクトこそないものの、非常に物珍しさがあると見ている。その理由については主に2つ。

①規模の大きさ
上記にも示したがこのバグは「プレイしていれば誰でも起こる」のである。しかもオフラインでだ。
オンラインならまだわからなくもない。根幹となる鯖が消失してしまえばどうしようもなくなるし、そういった不具合でサービスを終了したオンラインゲームもある。
しかしRSはオフラインでプレーするものだし、そもそもオンラインの発端となるWi-Fiが確立されたのは4世代からである。
このようにきのみ問題はオンラインの環境がないゲームにも関わらず、プレイヤー全員に起こった。

②蓋然性の高さ
これは要するに「一定の操作を介せずとも発生してしまう」ということだ。
普通バグというものは何かしらの手順を踏まないと起こることはない。特に意図的にこれを起こすものは「裏技」と呼ばれたりするし、セレクトバグやなぞのばしょを始め、ポケモンがそういった話題と切っても切れない関係にあるのは周知の事実でもある。
他のゲームではねこねこソフトのアダルトゲーム『みずいろ』や、セガの『PSO』などダウンロード/アップデートをしただけでHDDのデータを吹き飛ばしてしまうという恐ろしい不具合の事例も存在する。
しかしこれらはあくまで任意のタイミングでセレクトを押したり、四天王の部屋の前でなみのりをしたり、インストールなどのアクションを行ったときの話である。きのみ問題はそんな特殊な手順がトリガーとなることなく、ゲームを起動するだけで発生してしまうのだ。

【きのみ問題の終息】
さて、このような事態を受けて当然任天堂側は修正の対応に追われた。具体的には、修正パッチを配布するというものだ。
騒動から10日ほどが経過した2003年12月3日、「不具合を書いたメモを添え、カートリッジを修理センターまでお送りください」という旨の声明を発表した。現在のそのリンクが残っている。以下より。

www.nintendo.co.jp
ここに書かれているように当初は郵送及び持ち込みのみの修理であったが、次第に解消方法が拡大していった。
翌2004年にはポケモンセンターや月刊任天堂(後のDS/Wiiステーションの前身)などへの持ち込みに加え、同年1月29日発売のFRLGにおいて通信ケーブルを用いたアップデート方法も確立された。
こうして未曽有のレアケースとなったきのみ問題は収束に向かったが、上記リンクにもある通りなんと2016年まで郵送での修理対応は行われていた。この辺りは流石任天堂と言うべきか。

 

 

【きのみ問題がシリーズに残したもの】
概ね上述したような内容がきのみ問題による一連の流れだが、戦争で皮肉にも経済特需が起こるように、このバグは後学や恩恵も任天堂社員、引いては我々にも与えている。3つに分けて紹介していこう。

①類似ケースへのスムーズな対応
「プレイしていただけで誰でも起こる」というわけではないが、2006年発売のDPにもポケモン界を席巻させたバグがあった。
そう、なぞのばしょである。

最早言うまでもないが、当時のデマや或いは誤操作によって、四方を謎の壁に囲まれて動けなくなり泣き寝入りしたキッズは数知れない。そんなキッズたちの救済策となったのが先程も触れたポケモンセンターや、月刊任天堂改めDSステーションである。
Wi-Fiがこの頃から使われ始めたのも大きかったが、きのみ問題と同様の形態のバックアップ体制によって、多くのプレイヤーが暗黒空間からの脱出を果たした。

②エメループの発見
またしても僕が好きな乱数の話になるが、きのみ問題は乱数の発展に大きく寄与している。それが諸君らも一度は聞いたことがあるかもしれない「エメループ」の発見だ。
何度も言うようにきのみ問題は「日付関連のイベントが起こらなくなる」ことである。よって、365日目で止まった内部の時間は同様の乱数を文字通りループしてしまうのだ。
これによって「固定シンボルを粘っても同じ個体が出る」「ミナモデパートのくじの当選番号が同じになる」などといった現象が起こってしまう。この不具合を逆利用したものこそ、乱数調整の代表格エメループなのである。
現在では技術の発展によりID調整まで可能となった。

③初めての色違いの配信ポケモン
きのみ問題のさなか、修正パッチの広告を目的とするために任天堂はある策を打った。
それこそが史上初となる「確定で色違いとなるの配信ポケモンジグザグマである。先述したポケモンセンターや月刊任天堂にてRSそれぞれのバージョンの個体が配布された、
これといって特別なわざはないが、このジグザグマはチイラのみを持っている。3世代ではかのマボロシじまでしか手に入らなかったこのきのみの配布もまた、何とも言えない特別感がある。
なおこれ以降の確定で色違いとなる配信は恐らく、WCS2008の優勝者を記念したミロカロスまで待たなけれないけないこととなる(さいはてのことうのミュウなど、固定シンボルで色違いが出る可能性のポケモンはいる)。

ちなみに写真は交換で手に入った僕の持っている個体。

 

ポケモンバンクより

21.お蔵入りのリベンジ?

どうしても何かと評判の悪いイメージがついてしまっているアニポケベストウィッシュ。

その理由としては各々がいろいろあるのかもしれないが、やはり制作サイドにとって最大の誤算であり、悪評の遠因の多くを占めているものとしてお蔵入りとなったエピソードを挙げないわけにはいかない。
それがかの『ロケット団VSプラズマ団!』だ。

理由はご存じの通り東日本大震災に配慮を行ったもの。過去の新潟中越地震の際にもAGの『ゆれる島の戦い! ドジョッチvsナマズン!』が放送延期となり、以降「じしん」がアニメで使われなくなったのは有名な話である。
だがお蔵入りの原因は地震ではなく、福島第一原発事故によるものであった。

次回予告のアララギ博士のセリフ「エネルギーが加速度的に高まっている……!」に見受けられるように、ロケット団リゾートデザートから発掘した「メテオナイト」が熱暴走を起こし、ヒウンシティを被害に巻き込む……というくだりがある。
この様子が原発事故を連想させてしまった。

本来作中の展開における最初の布石となったエピソードのお蔵入りは、BWに大きな軌道修正を強いることとなった。
このエピソードを皮切りに早々に道化役へと戻る筈であったロケット団のシリアス化の継続であったり、プラズマ団の登場が2年先延ばしにされたりなど、この辺りの話は最早ここでする必要もないほど諸所で議論が交わされている。


……とここまでは諸君も既知の話ではないだろうか?
だが僕が思うにこの悲劇的な話には続きがある。それはお蔵入りから9年経った新無印のとあるエピソードである。

それが新無印編第14話『初イッシュ地方! 遺跡でレイドバトル!!』だ。ゴウがメグロコヒヒダルマゴルーグをゲットした回である。
余談ながらこの話はアニポケ通算1111話に当たるある意味節目でもあるのだが(どうせなら11/11日に書けばよかった)、注目すべきはその舞台とスタッフだ。

タイトルにもある通り、サトシとゴウが訪れたのはイッシュ地方。そして舞台は9年前お蔵入りになったリゾートデザート
さらに関わっているスタッフは脚本・冨岡淳広作監・夏目久仁彦、作画協力にスタジオたくらんけのメンバーといった具合であるが、これは『ロケット団VSプラズマ団!』を制作した面子と全く同じなのである。
要するに、お蔵入りエピソードと「同じ舞台」かつ「同じスタッフ」により今度は放送が成就したのだ。
これは密かな制作側のリベンジではなかったのだろうか、と僕は考えている。

アニポケBWについては様々な、どちらかと言えばよろしくない評判を耳にすることが多いが、こうしたスタッフの努力を忘れないでほしいと切に願っている。